天気のよい研究日。友人(大学蹴球部後輩マネージャー)の「熱」を体感しに、両国の事務所からご近所のギャラリーまで自転車でフミ散歩。
「藤森 詔子|生きていることをあたりまえと思うな!」
2022年11月26日(土) — 12月24日(土)
11:00 – 19:00 日曜・月曜・祝日休み
GALLERY MoMo 両国
GALLERY MoMo 両国 では11月26日( 土) から12月24日( 土) まで藤森詔子による個展「生きていることをあたりまえと思うな!」を開催致します。
藤森詔子は1986年北海道生まれ、2013年東京芸術大学修士課程を修了し、群馬青年ビエナーレ(2010年) やFACE2014損保ジャパン美術賞などに入選し、国内で個展を重ねて来ました。
初期作品では、内臓や血管が透けて見えてしまうかと思えるほどの、皮膚というより薄い皮膜で覆われた性別が判然としない人物を描き、そうした肌で感じられる感覚にシリアスにリアリティを持ち、モチーフとして来ました。
近作では、皮膚を覆い隠すファッションを第二の肌と捉え、ファッションと関係のある日常的な風景を描き、コミュニケーションとしてのファッションやSNSなどを肯定的に表現しました。しかし、そうしたコミュニケーションの在り方や、人との距離感をテーマに描こうとしてきた藤森にとって、コロナ禍でそのコミュニケーションの断絶を余儀なくされ、 “人に近寄れない病気” であるコロナ感染症の状況は、制作内容に影響せざるを得なかったと語り、自粛中自身の絵画に対するあり方について再考を重ねてきました。 藤森は、前回の個展から、社会で起こる急速な変化や問題を目の当たりにし、劇的な絵画の世界で起きていたことが現実世界で起きていることに衝撃を受け、世間一般の当たり前の暮らしを見直すようになったと言います。
同時に私たちは、社会に存在する見えない「常識」や「当たり前」など他者からの評価基準に縛られて生活してきたと気づき、そのような周りからの評価に縛られていた価値観から解放を求めた作品は、神話のワンシーンのような群像劇を思わせ、藤森自身の体験を投影させているようでもあります。個人的な物語を描いているようにも思えますが、多くの女性が抱える問題、また他人が抱えているであろう問題を可視化しているとも理解できます。
そうした意味で藤森作品は、自分自身が他人の「常識」に苦しめられているにも関わらず、他者に自分の「常識」を押し付けている可能性もあると気づかせ、見る人たちに新たな視点をもたらすでしょう。
本展では、原点を見直す契機となった前回の個展『舵を取れ!』からさらに掘り下げた新作約10点により、藤森の新たな試みを展開する予定です。皆様のご高覧をお待ちしております。
白状すると“人は生まれてきただけで価値がある” とは、長いこと思えず生きてきました。
自分の価値は他人が決めるもので、他人からの評価を失うことは自分の存在意義を失うこと。
他人が自分を評価にかける幾つかの項目を満たすために、努力をし続ける必要があると信じて疑いませんでした。
けれど、あの頃願っていた未来にたどり着けなかった今、何を希望にこの先の未来を歩いていけばいいのでしょう?
「生きていることをあたりまえと思うな!」を制作している間にロシア・ウクライナ戦争が開戦し、安倍元首相が命を落とし、まるで絵の中の世界が現実化してしまったような恐ろしさを感じながら筆を進めました。
世間一般の“ジョーシキ” で“フツウ” は、本当は間違っているかもしれない。
“そういうもんでしょ。” は、本当にそうなのでしょうか?
インパクトある140文字では物事のほんの一部しか見えないのに、まるでそれが本質かのように語られ、更に首を締められていく。
視点を変えて知識をつけなければ、ある日突然に当たり前と思っていた前提が崩壊し、大切な人を何かに奪われてしまうかもしれません。
大切なものは是が非でも自らの手で守らなければいけない。
そして、人生が上手くいかないと思う人がいれば肩をポンと叩き分かち合いたい。
そのようなことを考えながら描いたこれらの絵が一体何になるのか分かりませんが、今はただ、やれるところまでやっていこうという思いです。
2022 年 藤森詔子
※展覧会情報はGALLERY MoMo公式ホームページより抜粋して掲載させて頂いています。