2023年10月7日(土)に第4回共立女子大学建築・デザイン学部科記念連続セミナーが開催され、生徒のみならず、建築・デザイン学部の教職員にもご参加いただきました。
今回は建築家兼プロダクトデザイナーの芦沢啓治氏をゲストにお迎えし、第一部を芦沢氏の講演会、第二部を芦沢氏と学生・教員とのトークセッション形式で行いました。
まず初めに芦沢氏のプロフィール紹介があり、そこで予備校時代のデッサンの先生が稲葉先生だったのと話があり、生徒からは当校との不思議な縁に驚きの声が上がりました。
第一部の講演会では主に「建築とプロダクトの融合」についてお話しいただき、全ての名建築はその建築空間のための家具があり、全てのプロダクトは建築空間の中に存在するものであるとのお話がありました。
現在の日本の建築教育には「空白の時間」があるのではないかとの問題提起もされ、建築を学んでくる人間は家具のことを知らず、家具を学んでくる人間は建築のことを知らない。それこそが現在の建築とプロダクトにおける「ズレ」を生じさせているのではないかと強く感じ、教育者の観点からも空間と家具が一体となるものづくりの重要性について改めて考えさせられました。
建築家とシェフは同じような仕事であり、一流のシェフが素材にこだわり、ひたすらに同じレシピの研究を重ねるのと同じように建築はもっと材料に対しての意識を高く持つべきである。美味しいカレーライスを作りたければ美味しいカレーライスを食べ、そこから発見し学びを得るように、建築を学ぶ学生にとってこれからいかに多くの名建築に触れ合うかが重要だと学びました。
第一部の最後には学生へのメッセージを頂戴し、学生に伝えたいこととして
1・デザイン建築ものづくりが好きになる
2・いいデザインがわかるようになる
3・今日聞いたこと・わかったことを伝える
の3点に絞り説明をして頂きました。
また、デザインを好きになること「I love desing」
建築家やデザイナーのアイディアや技術は歴史「History」からくることなど、ご自身の経験談を交えて手書きのスケッチで学生にも分かりやすく熱い思いを伝えていただきました。
第二部のトークセッションでは、学生からのみならず教職員からも質問が出るなど活発的な質疑応答の場となりました。
印象的なお話としては
「仕事をする上で依頼主の過剰な要望に対しては断ることも大切であり、プロとして社会に対して正しい判断をしていくことが求められる」
「建築家とデザイナーに必要なものは体力と好きなものを続けること、好奇心を持って突き進んでいくこと、時には他人の意見を聞かないことも才能として必要である」
「建築家で食べていこうと思った瞬間は、いつも最初は自分の作ったものに対して自信がなかったが、周りのメディアや編集者からの評価があり背中を押されると自信に繋がっていった時に感じた」
「学生時代にやっておいた方がいい事として物の裏を見る癖をつけること、裏を見ると構造などが理解でき楽しくなり、数年後には大きな差になる」
最後に毎回恒例の「今までされてきた仕事の中で一番お気に入りの作品はなんですか?」の質問に対しては「本当にどの作品も納得していない。いまだに直したいと思っている」とこれまでの講演者と同じ回答であり、出来上がったものに満足せず、より良い作品を創造し続けるというデザイナーとしての信念を強く感じ、生徒・教員共にものづくりに対する熱い想いに胸を打たれました。
芦沢先生、お忙しい中、建築デザインを学ぶ学生にとって貴重なお話を分かりやすく伝えていただき、本当にありがとうございました。
文:まちづくり研究室 山下幸助
芦沢啓治(Keiji ASHIZAWA)
横浜国立大学建築学科卒。1996年に設計事務所にてキャリアをスタート。2002年に特注スチール家具工房「super robot」に正式参画し、オリジナル家具や照明器具を手掛ける。2005年より「芦沢啓治建築設計事務所」主宰。「正直なデザイン/Honest Design」をモットーに、クラフトを重視しながら建築、インテリア、家具などトータルにデザイン。国内外の建築やインテリアプロジェクト、家具メーカーの仕事を手掛けるほか、東日本大震災から生まれた「石巻工房」の代表も務める。最近の作品としては、9月に代々木公園前にオープンしたTRUNKホテルのプロジェクトや、5月に歌舞伎町タワーの最上階を含む45~47階にオープンしたBellustar Tokyoのペントハウス・レストラン、バー・スパ、4月に代官山のヒルサイドテラスにオープンしたコンランショップ、海外では上海で2店舗目のブルーボトルコーヒーなどがある。