「住生活研究室」という名は前任の戸田泰男現名誉教授から引継ぎ、名乗らせていただいています。
研究活動は、主に伝統的集落や民居、いわゆる「建築家なしの建築」を調査研究し、そこで営まれている生活と合わせ、その「住生活」を考察するというものです。
そして、先人の知恵を借り、変化の激しい現代社会において、未来へ向けた新たな「住生活像」を思い描くことを目的としています。
調査は、手の中に収まるような小さなスケールから、インテリア空間、建築空間、建築の周辺=ランドスケープ、街、都市までを横断的にとらえ、それぞれの繋がりがどうあるかについて、実測を基に行っています。
また、生活空間=ハードだけではなく、そこで営まれる生活=ソフトにも着目し、総合的な住生活像を解くことを研究目標にしています。
研究室の学生とは、そのような横断的な視点で、様々なものを観て考え、各自が独自の「住まい観」を構築できるよう議論をし、ゼミナールを行っています。
特に「衣・食・住」という言葉を「食・衣・住」と読みかえ、人に必要不可欠なものとは何か、人の生活の根源的なものは何か、を追い求め、考察することを研究室のテーマとしています。
私、稲葉はこれまで、中国・南西部に点在する客家集落および民居の実測調査研究、旧中山道木曽馬籠宿集落調査および修景計画、山形県金山町街並み調査など、伝統的集落や民居の住環境について、実測による調査研究を多く行ってきました。
現在は、専門研究として、ドイツ・ワイマール時代の集合住宅ジードルンクの住環境についての研究、そして、住生活研究室の20年来の継続研究として、前任の戸田泰男現名誉教授から引継いだ、沖縄・伊是名島の集落/民居の実測調査研究を行っています。
沖縄・伊是名島へは毎年、夏季休暇の期間を利用してゼミ生と共に滞在し、調査研究の合宿を行ってきました。
「何でも観てみよう」「出来るだけ経験してみよう」「どんなことでも調べて みよう」ということが、「住生活研究室」の基本姿勢です。
「そこにはどんなものが、どのくらい、どのように「在る」のだろうか」
「生活」とは人が生きることそのものです。あらゆるものが関連して出来上が っています。
そして、「生活」は、決して同じ状態であり続けることはなく、日々変化して います。これから人の生活はどうなっていくのでしょうか。
「住生活研究室」は、そのようなことを考えている研究室です。