共立女子大学 建築・デザイン学部設立記念 連続セミナーが2023年6月3日(土)に開催されました。第1回目の今回は建築家・デザイナーの寺田尚樹氏をゲストスピーカーにお迎えし、第1部を寺田氏の講演会、第2部を寺田氏と教員、学生とのトークセッションとして、対面とオンラインで行いました。
第1部の講演会は、寺田氏の手作り料理やお子様のためのお弁当作りなど、美味しそうで素敵な写真と共に和やかに始まりました。
ロンドンのAAスクール時代の研究の中で、ご自身の幼少期からの体験を振り返ることで発想された、自分がミニチュアになって世界や空間をデザインするお話や、日本へ帰国されてからのデザイン活動の中からつながるTERADAMOKEIの紙のミニチュア模型のお話へと続きました。初期の添景としての模型から街の風景を構成するミニチュアオブジェクトへの発展、様々な企業の販促ツールやマンガ、アニメーションとのコラボレーション、またその紙のミニチュアを使ったTERADAMOKEI PICTURESの映像作品まで様々に繋がって、プロジェクトが現在進行形で進化発展している様子を感じることができました。
15.0%のアイスクリーム専用スプーンのお話では、アルミ素材の熱伝導効果を生かしたアイデアや、昔ながらの木で出来たアイスクリームスプーンを想起させるアイコニックなスタイリングについてなど「説明しなくても、誰にでもわかるものをデザインすることが重要」というメッセージをいただきました。
他にも窓にQRコードをつけてスマートフォン上でARのような表現をすることで、看板広告をやめたビルのデザインや、元気になれる場所、楽しくなる場所として設計されたご自宅のお話、デジタルとリアルを繋げるゲームアプリデザインのお話など、寺田氏が楽しみながら活動されていることが様々な人の心を動かして、コラボレーションやお仕事に繋がっているという素敵なサイクルを感じることができました。
第2部のトークセッションでは、学生からの質問に対して寺田氏の活動やお仕事と絡めて回答いただく形でお話が進みました。
印象的なお話としては
「算数や図工など、人と違った解き方を見つけることが好きだった。いかに人をびっくりさせるかが僕らの使命。」
「最終的には人と人との繋がり。自分のユニークさやキャラクターを理解してもらうことが大切。」
「すべての作品は共同作業。いかにして協力してもらう雰囲気や状況を作るか?その積み重ね。」
「自分がやりたいことをしっかりとクライアントに説明して説得することが大切。」
など回答をいただき、登壇した学生だけでなく聴講の教員からも質問が出るなど、楽しいトークセッションとなりました。
今回の寺田氏の講演とトークセッションでは、お仕事や暮らしを楽しむことと、興味に対してすぐに行動することの大切など、建築やデザインを学び活動する我々にとって非常に沢山のポジティブなメッセージをいただき、モチベーションが刺激されるような貴重なセミナーとなりました。
文:プロダクトデザイン研究室 福田 一郎
写真:ビジュアルデザイン研究室 水川 史生
Naoki Terada (寺田尚樹)
寺田尚樹は1967年大阪生まれ。1989年明治大学工学部建築学科を卒業。その後イギリスに渡り、1994年英国建築家協会建築学校(AAスクール)ディプロマコースを修了。帰国後の2003年にはテラダデザイン一級建築士事務所を設立し、インターオフィスとイトーキの協同ブランド、i+(アイプラス)の家具デザインやタカタレムノスからアイスクリームスプーン「15.0%」、時計CARVED(カーヴド)を発表しています。現在、株式会社インターオフィス 代表取締役社長。 建築や家具、プロダクトデザイン、サインデザインなど幅広い分野で数多くのデザインを手掛けています。