建築・デザイン学部設立記念連続セミナー 第3回講演会レポート〈2023年8月23日 細田守氏〉

共立女子大学 建築・デザイン学部設立記念 連続セミナーの第三回が2023年8月23日(水)に開催されました。今回はアニメーション映画監督の細田守氏をゲストにお迎えし、第1部を学生とのトークセッション、第2部を学生の作品を見ながら細田氏にコメントを頂く形での講評会を行いました。

第1部のトークセッションの始めには細田氏をお招きするきっかけとなった石田和人教授との学生時代の貴重なお話を伺う事が出来ました。

次に学生からの質問を細田監督にお答え頂く形でトークセッションが進みました。

「今までで印象に残った場所は?」という質問に対し「フランスのアヌシーで行われた映画祭」とのお答えを頂きました。そこでは野外上映もあり、芝生に座りながら世界のアニメーション関係者と時間を共有することの豊かさがあったとのこと。それらの体験が細田監督のアニメーション制作にも反映されるとの興味深いお話を伺うことが出来ました。

また「自分が作りたいものと世間が求めているものに違いを感じることはあるか」という質問に対しては「基本的には自分が作りたいものを作っている。作り手が楽しんで作っている方が観客にも伝わる映画になると思っている」とのお答えが。建築やデザインという何かを作り出す作業を日々している学生達にもとても響くお話でした。

その他にも「制作途中が一番楽しく、完成すると気持ちは次の作品に向かっている」や「アナログと3Dでの制作を区別して考える必要はない。面白ければどちらでも良いと思う」など学生のクリエーションにも繋がるお話を沢山伺う事が出来ました。

第2部の作品講評会ではまずデザインコースの学生が制作したアニメーション作品を2点見て頂き、細田監督よりコメントを頂きました。

初めてアニメーションを作ったという学生に対して監督から「専門的なことを知らずにここまで引き込まれる作品を作れる事がすごい。また一晩で描き切ってしまういきおいがとても良い」との嬉しい感想を頂きました。

次にデザインコースの木工演習での椅子制作の課題には「全体的に造形としての美しさがある。パーツ一つ一つに意識が行き届いている点が素敵だと思う」など学生が時間をかけ試行錯誤してきた作品に対して励みとなるお話を伺う事が出来ました。

アニメーションという大人から子供まで幅広く楽しむことの出来るコンテンツを日々制作している細田監督から直接お話を伺う事で建築やデザインというものづくりを学び、これから社会に出ていこうとしている学生にとって励みとなり、また参加した全員にとっても非常に有意義な時間となりました。

文:建築・デザイン学部 助教 草薙彩音
写真:ビジュアルデザイン研究室 水川 史生

細田 守(Hosoda Mamoru)
1967年生まれ、富山県出身。金沢美術工芸大学卒業後、1991年に東映動画(現・東映アニメーション)へ入社。アニメーターを経て、1997年にTVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎(第4期)』で演出家に。1999 年『劇場版デジモンアドベンチャー』で映画監督デビュー。2000年の監督2作目、『劇場版デジモンアドベンチャーぼくらのウォーゲーム!』の先進性が話題となる。その後、フリーとなり、2006年に公開した『時をかける少女』(原作:筒井康隆)の記録的ロングラン上映で、新時代の監督として知られるようになる。2009年に監督自身初となるオリジナル作品『サマーウォーズ』(09)を発表。2011年に自身のアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立し、『おおかみこどもの雨と雪』(12)、『バケモノの子』(15)、『未来のミライ』(18)、『竜とそばかすの姫』(21)と、3年おきに話題作を送り出し、国内外で高い評価を得ている。『未来のミライ』では、第91回アメリカアカデミー賞の長編アニメ映画賞、第76回ゴールデングローブ賞のアニメーション映画賞にノミネートされ、第46回アニー賞の最優秀インディペンデント・アニメーション映画賞を受賞。『竜とそばかすの姫』では、第74回カンヌ国際映画祭のオフィシャル・セレクション「カンヌ・プルミエール」部門に選出された。