フミ3ぽ

お天気も良いので、本年度よりデザインドローイングの授業を担当して頂いている丸山素直先生と窪田遥一君(小6)の二人展「はるすなお展」を観に駒込「勝林寺」までフミ散歩。作品や展示空間が魅力的だったのは勿論、明るく元気な「はる君」と丸山先生の微笑ましい信頼関係に「ほっこり」させて頂きました。

※会場である勝林寺の本堂は手塚貴晴+手塚由比氏による設計です。

はる君の絵の先生として通いだしたのは、2020年2月頃でした。当時のはる君は小学4年生。初めて見せていただいたはる君の絵は、迷いの無い線がとても魅力的でした。明るくて、誰とでも親しくなれるユーモア、パワフルな性格が伝わってきていました。すでに持っているはる君の魅力を潰さないこと、そして何よりも「描くことが大好き」という気持ちを失わせないこと、これが私のやるべきことだと率直に感じました。それから今まで、ほぼ毎週、週に一度通い続けています。
初めから今までずっと大切にしていることは、絵の技法や技術を教え込む先生と、それを教わる受け身の生徒という関係ではなく、絵描き仲間くらいの関係づくりです。その為に、はる君が下書きを終えて色を塗り始めたら、私も並んで絵を描いています。真剣に描いている大人が近くにいた方が、いい刺激になります。下書きの時は、描いているモチーフを丁寧に観ているかな?雑な観察になっていないかな?という点だけ気をつけて見守っています。丁寧に観たり考えることは、観察力や想像力が伸びるので、はる君が将来美術の道を目指さなかったとしても、大切な生きるカになります。はる君が時々楽しく話してくれる小学校での出来事やアニメの話などは、夢中になって話してくれるので、私も毎回楽しく聞いています。そうして絵を描く時間は、私たち2人にとって楽しい時間になっています。丁寧に観る力と魅力的な楽しい線が重なって、素晴らしい作品がみるみる増えていきました。
今や大きな画用紙に描くのが当たり前になっていますが、最初は普通サイズ (八つ切りなど)の画用紙に描いていました。私が通い始めて3ヶ月後くらいには、絵が納まりきらないと、画用紙を繋いで大きな絵になっていき、それでは最初から大きな紙にしようとロール紙に描くようになりました。大きな絵画づくりは私には一苦労でも、はる君にとっては逆に描きやすいようです。大きな紙に描き始めた最初の頃は特に、まだ試行錯誤している雰囲気も伝わってきて独特な魅力があります。今回の展示では、その中の一つである「牡丹」も展示しました。はる君と一緒に描いていて、純粋な「描きたい」という気持ちほど強いものはないなと感じています。大人になるとよく聞くのが「私は絵 が苦手で…」という言葉です。本来ならば「描く」「表現する」って自由で豊かなことで、上手い下手など関係がなく、本人の純粋な気持ちや視点によるものです。
ある時、はる君は私が描きためている花のスケッチを自然と模写するようになりました。サインは愛らしい文字で「は るすなお」と書いてありました。勝手にユニットを組んでくれたのです。私の花のスケッチは良い意味で化けていて、さらにその作品を布に仕立てたいと思いました。純粋な「表現したい」気持ちが、キャッチボールみたいに行われています。
はる君の心の中は、いつも「描きたい」という純粋な気持ちがあって、「描かなきゃ」というものは一切ありません。手が勝手に動いています。その純粋な気持ちがのびのびとした線や色、形に現れていて、作品を見る人の心を揺さぶるんだと思います。昨年、全く同じ時期に行った1回目の「はるすなお展」では、「なぜか涙が出てきました」「私も 絵を描きたくなりました」などの感想をたくさんいただきました。そして今回も展示ができたのは、純粋に「つくりたい」と思っている大人たちの力が合わさっているからです。はる君のことを大らかに優しく厳しく見守っているご 家族と、強くて優しい協力的な方々の力が合わさって、年齢も障害も全てを切り離した、温かくてパワフルな展示会が今回もできていると思います。
本日は、この展示会に足を運んでくださって、本当にありがとうございました。はる君の作品が、少しでも多くの人の心に触れられたらいいな、と思っております。

丸山 素直

本日は『はるすなお展』にお越しいただきありがとうございます。
窪田 遥一(くぼたはるいち) 2010年7月24日生まれ。三兄弟の長男。小学6年生です。
なんと昨年に続き、2回目の開催となりました。はるいちが絵を楽しく描き続けているということです。
昨年の開催はコロナで学校が休校になったから毎日描き続けた結果の展示会でした。
今年は、はるいち自身が展示会をやりたいと。お友達を呼びたいと。そんな気持ちが芽生えてくれた事が何よりも嬉しいと感じています。
描く絵にも変化が見られます。色の塗り方、描き方、以前よりずっと丁寧になりました。そして、よ〜く見ています。細かいところまで。虫の足の毛や、卵など、見るだけでゾクッとします。
以前は描き終わるまでやめられずに夕飯が遅くなることも多々ありましたが、今では今日はここまで、と切り上げることができるようになっています。
来年は中学生。思春期突入といったところでしょうか。はるいちが大好きな素直先生もコロナ前のような忙しさが戻ってきています。一緒に絵を描く時間も減ってくるでしょう。反抗期もくるでしょうか。
さて、彼がどのようになっているのか、楽しみにそして全力で応援していきたいと思っています。人を動かす力を持つ息子、これもはるいちの魅力なのでしょうか。この展示会でもたくさんの人のご協力をいただきました。 ほんとうにありがとうございます。
そして、これからもどうかよろしくお願いします。

2022年4月 勝林寺 窪田