稲葉ゼミでは、3月上旬、2泊3日で長野県木曽へ調査研究旅行を行ってきました。参加者は、ゼミ所属の学部3年生9名と稲葉の計10名でした。
3月2日、学生9名は、中央本線特急あずさに乗り塩尻駅下車、期間中の宿となる塩尻駅近くの「KICHI」(https://kichideasobo.jp)にチェックインしました。

こちらの宿は、元自動車オートバイの整備販売をしていた店舗を改装したもので、主催の方は東京からの移住者だそうです。宿泊スペースと音楽スタジオを中心に街へ様々なことを発信していくことを考えて活動をしている、といったお話を聞かせていただきました。
その後、2台の車に分乗し、木曾平沢へ行きました。

木曾平沢は、有名な宿場町奈良井宿の隣にある、漆工町という漆の工芸品の生産を生業とする集落です。現在は伝統的建造物保存地区に指定されています。
旧中山道沿いに位置し、街の人たちは江戸時代から街道を使い、ここで作られた漆芸の生活道具を行商していたそうで、今でも漆芸に関するお仕事をされている方々が多く暮らしていらっしゃいます。
街に関して、現塩尻市役所職員で30年来、旧中山道、木曽の集落に関して調査研究及び保存修復に携わってこられた石井健郎氏に解説していただきました。
石井氏の案内で、漆芸工房のひとつ、丸嘉小坂漆器店さん(https://maruyoshi-kosaka.jp)にお邪魔し、お話を伺いました。

丸嘉小坂漆器店さんは3代目の若いご主人のもと、伝統的技術と現代的なデザインとを結びつけた新しい漆器をたくさん製作している工房です。百貨店にも出店しているそうです。特に、ガラスに漆を塗る技術はこの工房独特のもので、多方面から高い評価を受けています。

普段は見られない工房の中も特別に見学させていただきました。漆は埃を徹底して嫌いますので、細心の注意が必要です。
工房内では、ゼミの学生と同年代の方々が一生懸命製作活動に励んでいらっしゃいました。
みなさん、漆の魅力に魅せられ修行に励んでいらっしゃいます。同年代の方々が頑張る姿は、同じものつくりについて学ぶものとしてとても励みになります。
その後、さらに石井氏の案内で、かつて漆芸工房及び商店として営業していて、現在は営業を終えられた民家兼工房を見学させていただきました。

木曾平沢の集落でも大きな民家の一つです。

この民家は、同じ木曾平沢の酒井産業株式会社さん(https://www.kiso-sakai.com)が買われ、民泊を中心として、地元の活動と訪れるお客さんとを繋げる拠点施設とするべく改装中でした。そのお話を社長さま(奥に映る方)から直接お聞きすることができました。
その後、別の民家(空き家となっており、まちづくりの寄り合い所として使用している)に集まり、街の印象について意見交換しました。

日本の伝統的民家は、ストーブが立ち上がるまでとても寒いです。ですので、室内でもコートを着たままです。(それも良い体験です)

みんなで街の気になったところを各自のスケッチを交え、語り合いました。
夜は、隣街贄川宿の関所亭(https://www.instagram.com/sekishotei)という元お蕎麦屋さんで現在は街の人たちが共同で運営している、食堂兼イベントスペースで夕食をいただきました。

この集落を気に入り移住した方が、たくさんのお料理を作ってくださいました。


学生の中にはおかわりした人も。


今回、シフォンケーキを作ってくださった方。
このように、地元に住まわれている方々が変わり番でこのスペースを運営されています。

翌日は、廃校になった中学校が、合板工場になるということで、その工事現場を見学させていただきました。

特別に案内してくださったのは、前日にもお世話になった、酒井産業株式会社の社長さまです。運営母体は別組織とのことですが、同じ地元の活動としてご説明くださいました。

この合板工場は、周辺の山林から出る間伐材を利用し、それで高品質な合板を作るだけでなく、木を使った教育や文化活動、「木育」をするための拠点にしたい、とのお話を聞かせていただきました。

周辺の小中校生が、林間学校等でも利用できるように宿泊スペースもつくるそうです。そこは、他地域からのゲストも受け入れ可能にしたいとおっしゃっていました。

森林を活かすためには必然的に間伐材は出ることになり、それを上手に利用することが循環型社会のためにとても大切なことである、というお話を聞かせていただきました。

その後、伝統的建造物保存地区制度の全国的先駆けとなった奈良井宿へ行き、「生きた保存修復」とは何かというお話を、実際にその活動をされてきた石井氏から解説をいただきました。

かつての「ディスカバージャパン」ブームでも有名な宿場町で、ここでは映っていませんが、今は、外国からのお客さまもたくさん訪れています。

宿場町内で建物内部を公開している「中村家住宅」を見学しました。

このお宅は、元櫛問屋さんで、江戸時代にはここを通る観光客のお土産物として人気のお店として大変な大店(おおだな)さんであったようです。
建物の構成は、奈良井宿の伝統を受け継ぐもので、奥行きの長い平面形式になっています。

街道に面するお部屋=「みせ」の建具は取り外し式になって、その取り外しの方法も見せていただきました。

お昼は、宿場町内のお蕎麦屋さんでいただきました。木曽のお蕎麦はどこも絶品です。そしてお店ごとにおいしさが様々です。
まだまだご紹介したいことはありますが、今回はここまでにします。

今回のゼミ旅行では、観光地の宿場町とその隣の職人町の現在と、伝統的集落がこれからどのように歴史を育んでいくかについて、地元の方々の特別な計らいで身をもって知ることができました。また、地元の方々が、地元の未来を真剣に考えていらっしゃる様(さま)に大いに刺激を受けました。
塩尻市役所、石井健郎さま、丸嘉小坂漆器店、小坂玲央社長及び職人のみなさま、酒井産業株式会社、酒井慶太郎社長を初め、地元のみなさまの熱い想いを聞かせていただけたことは大変貴重な体験になりました。どうもありがとうございました。ぜひまたお邪魔し、ためになるお話を教えていただきたく思います。
どうぞよろしくお願い致します。
住生活研究室 稲葉唯史
